初の「マヌルネコのうた」アパレルが登場! つくった人たちに話を聞いてきた
「一日一回は聞きにきてしまう」
「メロディが頭から離れない」
「動画を再生していない時でも、歌詞が耳の奥で流れ続ける」
2021年4月15日に投稿されてから同年10月半ば時点でWeb合計319万(公式YouTubeチャンネル184万・公式Twitter135万)再生された、「マヌルネコのうた」。
「ものすごく中毒性がある」と話題になったこの映像は、那須どうぶつ王国で飼育されているマヌルネコであるボルとポリーを撮影してつくられたミュージックビデオです。
そんな中、この「マヌルネコのうた」のサムネイルをモチーフにしたアパレルグッズ2種が登場。ラインナップはコーチジャケットとビッグTシャツで、いずれも那須どうぶつ王国が2021年10月31日まで行っているクラウドファンディングの返礼品としてしか手に入らない限定品です。
今回は、マヌルネコのグッズが登場した経緯とマヌルネコの魅力、そして今現在行われているクラウドファンディングについて、那須どうぶつ王国総支配人の鈴木和也さんと、「マヌルネコのうた」の監督を務めたクリエイティブディレクター・映像作家である富永省吾さんにお話を伺いました。
鈴木和也さん
富永省吾さん
着ることが、希少動物マヌルネコの保全につながる
――マヌルネコのアパレルグッズが、クラウドファンディングの返礼品として登場するに至った経緯を教えてください。
鈴木さん:もともと富永さんとは、次のステップでグッズの開発をすることを視野に入れてました。「マヌルネコのうた」をリリースしたあと、短期間でYouTubeのフォロワーが約1.5万人も増えたんですね。YouTubeやTwitterという新しい入口でマヌルネコを知ってくれた人たちに、もっともっとマヌルネコの魅力を伝えるために、また、新しい切り口でさらに多くの皆さまにマヌルネコを知っていただけるチャンスだと思っていました。「マヌルネコのうた」はミュージックビデオというだけにとどまらず、多くの可能性があると感じていました。
――グッズの中でも、アパレルグッズにしようと思った背景を教えてください。
富永さん:「マヌルネコは直接触れない動物だから、アパレルグッズだと身に着けられてよりマヌルネコを身近に感じられるな」という思いがありました。
――マヌルネコのアパレルグッズというだけでもインパクトがありますが、特に「セリフの中が空欄」というデザインが特徴的で驚きました。
富永さん:セリフの中に「マヌルネコのうた」という文字を書いてしまうと、ただサムネイルをプリントしただけになってしまうかなと。「マヌルネコのうた」の動画を見たファンの方なら絶対に知っているサムネイルだからこそ、遊びの部分として「何も言ってない」状態にしました。いかにも勢いよくしゃべってそうなポリーの写真なのに、何も言ってない。ちょっと気になりますよね(笑)。その点をマヌルネコファンの皆さんに楽しんでもらえたらすごくうれしいですね。
「マヌルネコのうた」の実際のサムネイル画像
富永さん:それから、このグッズを着ることでその人自身がマヌルネコをいろんな人に知ってもらうための”広告塔”になれるという点も魅力かなと思っています。「その動物って何?」といった形で、身近な人たちとの話のきっかけにもなったり。ちなみに、このグッズを着るのに多少勇気がいるということは、もちろん理解しています(笑)。
鈴木さん:僕自身も、もちろんこのグッズのサンプルは見ました。品質もよく、プリントのクオリティも高くて大変気に入りました。Tシャツは流行りのオーバーサイズのシャツ、ジャケットの裏地はポリエステル素材ですが、ウィンドブレーカーに近い感じですね。
――これらのアパレルグッズは、どんなシーンで着用するのがオススメですか?
富永さん:那須どうぶつ王国に着て行ってマヌルに見せつけるもよし、大学に着て行ってキャンパスをマヌル色に染めるもよし、同窓会に着て行くのも素敵ですね。最悪パジャマでも。自由に着てもらいたいです。あ、ちょうど吹き出しが空白なので、寄せ書きにも使えますね。コミュニケーションが活発になるきっかけになってくれたらうれしいです。
鈴木さん:僕は孫と一緒に着たいですね。残念ながらキッズ用はないので、小学生になったら一緒に着れるように僕も支援します。勇気いるかも(笑)
マヌルネコのアパレルグッズの元になった、「マヌルネコのうた」誕生秘話
――もともと、富永さんは那須どうぶつ王国とのお付き合いがあった上で、「マヌルネコのうた」をつくられたんでしょうか?
富永さん:いえ、「マヌルネコのうた」をつくるためにコンタクトをとったのが最初ですね。僕は猫を飼ってるんですけど、本物がいるにもかかわらずYouTubeで猫の動画を見て過ごす日々を送っていて。いろんな動画を見ている中で、那須どうぶつ王国にいるポリーの動画を見たんですよ。「こんなに魅力のある生き物いないぞ!」と衝撃を受けました。
富永さん:ポリーには、スターになるだろうというポテンシャルを感じたんです。そこで、彼らのことをもっともっとメジャーにしていきたいなと。そして考えた末に「よっしゃ、歌にしよう」と決意しました。
――そのあと、那須どうぶつ王国にコンタクトを?
富永さん:そうです。直接、お問い合わせフォームから「私こういうものでございます」と連絡をいれました。「マヌルネコは希少種で、まず知ってもらうことが大切。猫を撮ることができる僕にぜひ撮らせてください」と。
――猫を撮れることがとても重要なポイントなんですね。
富永さん:そうですね。繊細に飼育されているマヌルネコのような希少種を、撮影のためだからと照明を当てたり気を引いたり音を立てたりと、ストレスを与えるようなことはすべきではないと思ってました。
――富永さんから送られたメッセージを見て、鈴木さんが抱いた最初の印象はどうでしたか?
鈴木さん:メールに書かれていた提案内容を見て、「かなり練りこんで考えた上で送ってきているんだな」と文章だけでも十分にわかりました。
それに、メールはポリーへの愛があふれてました。ポリーと私はもう5年来の付き合いでポリーの写真は数限りなく撮ってますし(笑)。”マヌル沼”に完全にハマるきっかけもポリーです。そのポリーに対して深い魅力を感じているということがとってもうれしかったです。
――ちなみに、「マヌルネコのうた」にも多く登場する那須どうぶつ王国のポリーですが、鈴木さんが思うポリーの魅力を教えてください。
鈴木さん:マヌルネコらしいマヌルネコ。一言でいうとアンバランスなんですよね。体が大きくて体が小さい。ずんぐりむっくりで足が短い。そしてかわいらしさと野生が同居しているそのギャップがなんとも魅力的。あとはやっぱり表情があるところがいいですね。いつも何か言いたそうな顔をしている。ポリーと会話できている錯覚にいつもおちいります(笑)、まさに「何も言っていないマヌルネコ」。でも何かを伝えようしている。想像力がかきたてられる存在です。
――富永さんはポリーのどんな点に魅力を感じますか?
富永さん:顔がおもしろいです(笑)。すごくオリジナルな顔をしている。タレント性があるというか……妙に気になる顔をしているんですよね。特に眉毛が絶妙。とても惹かれてしまいました。もちろんマヌルネコという種族そのものを愛していますが、ポリーはやっぱり特別ですね。
実際に訪れた那須どうぶつ王国は、まるでGAFAMのようなイノベーション企業だった
――那須どうぶつ王国に歌をつくろうと提案した後すぐに王国へ?
富永さん:まずオンラインで打ち合わせをして、熱く語り合いました。「一度那須どうぶつ王国に実際に遊びにきてください」とお誘いを受け、東京から那須に行って鈴木さんに一日かけて案内してもらったんです。マヌルネコだけを見に行くつもりだったんですが、動物園全体を見て非常に驚きました。「こんな動物園あるんだ!?」って。
――特にどんな点に驚きましたか?
富永さん:僕が知っている動物園は、どういうアングルで撮影しても絶対に柵やフェンスが入ってしまうんですね。でも王国はそうじゃない。すごく近くに動物たちがいるんです。ハシビロコウはすぐ傍まで寄れますし、レッサーパンダも触れるんじゃないかという近さ。
富永さん:王国に行く前は、マヌルネコを実際に見ることが目的だったんですよね。ロケハンです。でも実際に王国の皆さんにお会いして、革新的にビジョンを持ちそれを実践している様を見て、業界を変えていくにおいを感じたんです。まるでGAFAM(巨大IT企業Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftの頭文字を取った呼び名のこと)のようだと思いました。
鈴木さん:一日中富永君と一緒にいて驚いたのが、クリエイターだからなのか、相手の心にぐっと響くようなキーワードを入れてくれることなんですよね。特に、「那須どうぶつ王国は、GAFAMのような革新的なイノベーションカンパニーですね」という言葉はある意味気づきでしたし腑に落ちました。率直にうれしかったです。
また、ミュージックビデオの最後に流れる「マヌルネコは絶滅の危険性が高い野生動物です。さわったり、おうちで飼うことはできません。眺めて愛でましょう」という文章にある、この「愛でる」という表現も大好きです。
マヌルネコが幸せで、野生のまま生きているような環境づくりを
――富永さんは、たとえばどんな点を見て革新的だと感じましたか?
富永さん:たとえば、複数の動物を”同じ場所で”飼育している点ですね。普通の動物園だとひとつの場所に一種類の動物が飼育されていますが、那須どうぶつ王国ではそうではない。動物にも適度なストレスがないといけないそうで。確かに野生下での環境を考えるとそうですよね。こういった、「動物たちをできるだけ自然に近い状態で飼育する」という考え方に驚かされました。
――たとえばマヌルネコの施設では、その「自然に近い状態」をつくるためにどんな工夫をされてますか?
鈴木さん:まず、以前の放飼場より3倍も広く、天井高も3.5メートルにすることで、運動量も確保できるようになりました。また、岩場や砂地、倒木、植栽、滝等を設置して快適な環境を整備。岩場のくぼみに身を隠したり、樹木に寄り添うように低くふせると一瞬どこにいるかわからなくなりますね。また、不定期ですが飼育スタッフが給餌口から生肉を与えるパフォーマンスを実施しています。これは、給餌しながらマヌルネコの怪我など健康チェックを行う意味もあります。
このように、那須どうぶつ王国は、「動物福祉」の向上を大切にしています。動物福祉とは、動物にとって幸せな環境をつくることです。
――ボル、ポリーもすごくうれしそうにしてますね。
鈴木さん:そうなんですよね。今の施設には、ボルのお気に入りの切り株があるんですが、これは以前の施設からもってきたものなんです。すっかりボルの定位置になっています。
また、天気のいい日はガラスの一番近い位置にある広い砂場で砂浴びをする様子も見ることができます。ポリーも、ボルよりはゆっくりですが新しい放飼場に慣れてきました。最近は給餌の際にもボルの合間をぬってお肉を食べる様になりました。
それから、ポリーは雪が大好きなんです。冬期シーズンを迎え、雪の中でどのような動きを見せてくれるか楽しみです。野生下で過酷な生息環境で生き抜いている野生ネコ、マヌルネコに興味は尽きません。
富永さん:那須どうぶつ王国さんが行っている多くのチャレンジは、王国の園長さんをはじめ鈴木さんやスタッフの皆さんといった、多くのタレントがそろっているからできることだと思います。そして、イノベーションカンパニーたりうるにおいを感じたからこそ、もっとその魅力を伝えるようなお手伝いがしたいと思ったんです。
「助けてください」で終わるのではなく、ちょっとした遊び心をプラスする
――その思いを行動に移した結果が、歌やアパレルグッズの制作だったんですね。
富永さん:そうなんです。だから、いろんな思いを込めています。たとえば今回、アパレルグッズをクラウドファンディングの返礼品として登場させましたが、僕はクラウドファンディング自体をとてもハッピーなものにしたいという思いがあるんです。コロナ渦が続くなかで那須どうぶつ王国を存続させるためには、動物たちのご飯の費用や人件費などたくさんのお金がかかります。だから、クラウドファンディングは”援助”の意味合いが強いんですよね。
【過去の関連記事】
富永さん:でも、そうした中でもちょっとした遊び心やハッピーな気持ちがあると素敵だなって思ったんです。ただ単に「助けてください」で終わるのではなく、そこに「マヌルネコ、素敵!」と思ってくれる人が増えるようなデザインにしました。
鈴木さん:希少動物の保全は当園の責務です。その保全についてしっかりと直球勝負で伝えていかないといけません。そのためにはまず動物を好きになってもらい、興味をもってもらうことが大切です。その新しい入口を創るのはかなりチャレンジングなことです。なぜなら野生動物への尊厳にしっかりと敬意を持ちながら、エンターテインメントの力を借りて、さらに多くの方々に希少動物の保全の意味をお伝えすることは、過去に事例が無いからです。
聞いてくれる人たちが楽しく聞けるような環境をつくりたい。そのためには、なによりも作り手も楽しくやらないといけないと思うんです。富永君の言葉を借りれば、”人をハッピーにする”という形で、マヌルネコを知ってくれる人を増やしたいんですね。
「希少動物の命をつなぐことを真面目に伝える」ということと、「楽しく聞いてもらう」ということのバランスをうまくとりながら、そしてチャレンジングに富永君と今後もやっていきたいですね。
那須どうぶつ王国は、これからも、動物たちの保全のために”認知の裾野”を広げていく
――マヌルネコ保全のための、富永さんの思いを最後にお願いいたします。
富永さん:僕の使命は、マヌルネコをたくさんの人に知ってもらうことで保全につなげること。マヌルネコを見ると、なんというか……「今日も頑張ろう」って気持ちになれる人がいると思うんです。マヌルネコには人間を幸せにするパワーがある。だから、人とマヌルネコの懸け橋になる歌と、そしてアパレルグッズをつくりました。
そして今後も、こういった「人もマヌルネコもハッピーになれるようなもの」を鈴木さん、そして那須どうぶつ王国の皆さんと一緒につくっていきたいなと思っています。
――現時点でクラウドファンディングにて寄付をしてくださった方へのメッセージを、鈴木さんからお願いいたします。
鈴木さん:感謝という言葉では足りないです。言葉では言い表せないです。とにかくその信頼にしっかりと応えることが私たちの責任だと思っています。
寄付してくださった方からのコメントはもちろんすべて読んでいます。そして自分の言葉でご返信させていただいております。みなさん、自分のことより動物たちのことを真剣に考えてくれているんですよ。そこにはスタッフに対する感謝と、動物たちへの愛があふれています。
間違いなく言えるのは、ご支援やメッセージが、私たちの責務である「希少動物の保全」を進めるための大きな活力になっているということです。
――クラウドファンディング目標達成に向けての意気込みと、これから寄付をしてくださる方へのメッセージを、那須どうぶつ王国を代表して鈴木さんからお願いいたします。
鈴木さん:今、厳しい状況にはありますが、できるだけ近い将来にフルオープンでさらに魅力的に進化した那須どうぶつ王国を皆さまにお見せしたいと思っています。
そして、これからの那須どうぶつ王国にぜひご期待ください。
――ありがとうございました!
ご支援はこちらから
那須どうぶつ王国概要
所在地:栃木県那須郡那須町大島1042-1
公式サイト:https://www.nasu-oukoku.com/
公式Twitter:https://twitter.com/nakprstaff
公式Instagram:https://www.instagram.com/nasu_animal_kingdom/
概要:那須どうぶつ王国は、栃木県にある動物園。ユーラシアカワウソ、レッサーパンダ、マヌルネコ、スナネコ、ホッキョクオオカミ、ハシビロコウ等の希少種を種の保存を目的に飼育・繁殖。約150種700頭羽の動物たちが豊かな自然環境の中でのびのびと暮らています。