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コロナで集客60%減! 動物園の動物たちはどうなるの?

栃木県にある動物園・那須どうぶつ王国では、2019年4月22日にマヌルネコの赤ちゃんが、2020年4月27日にスナネコの赤ちゃんが誕生しました。いずれの種も、希少な野生ネコです。

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絶滅危惧種をはじめとした、生物の繁殖・保全に力を入れている当園では、さまざまな種の赤ちゃんが生まれています。

しかし、昨今の新型コロナウイルスの影響を受け、昨年比マイナス60%の集客減という苦境に当園は立たされています。

そんな苦しい状況の中、今動物園で暮らしている動物はいったいどうなるのか? 動物の保全活動はできなくなってしまうのか?

そんなお話を、当園の園長・佐藤哲也さんにスタッフが聞いてきました。

追加_2020-10-27 (32)

那須どうぶつ王国の魅力

――まず、那須どうぶつ王国ならではの、ほかの動物園にはない最大の魅力を教えてください

とにかく動物が近いことですね。「檻がないのがびっくり!」という感想を来園されたお客さまからよくいただきます。野生動物に近しく接することができる「野生への扉」としての動物園。これが那須どうぶつ王国ならではの特徴です。

最大のこだわりは、動物を「魅惑的」に見せること

――動物園として、一番こだわっていることは何ですか?

動物たちを「魅惑的」に見せること。ここに一番心血をそそいでいます。

前述のとおり、動物園は、お客さんが野生動物に触れあえる一番近い扉です。動物たちを見世物として見せるのではなく、動物のすばらしさをいかに表現し、「魅惑的」に見せられるかを慎重に考えながら運営しています。

――どうすれば、一番魅惑的に動物を見せることができるのでしょうか?

その動物が自然界で行っている行動に限りなく近い行動を、動物園の中で行えるようにしてあげることこそが、大切だと思っています。

動物の展示の基本はここにあると僕は思っています。自然界で彼らが行っている行動を、我々がいかに再現できるかにかかっているんですね。

たとえば、当園ではオオカミを展示しています。オオカミは行動徘徊型の動物。つまり、自分たちのルートを作って、いつもそのルートを利用して行動するんですね。そうした徘徊をしやすいよう、岩場や水辺、林といった環境を整えています。

また、当園では動物たちにさまざまなタイミングで食事を与えるようにしています。自然界では決められた時間にご飯を食べられることがないからです。とても大変なことですが、それが本来の野生動物のあり方なので、当園が力を入れているひとつのポイントでもあります。

東日本大震災以上の大打撃

――今回のコロナの影響はどれほど深刻なのでしょうか?

正直、東日本大震災の時以上の大打撃です。

年間の動物管理費は、人件費1億6,700万円、飼料費2,500万円、動物医療費330万円、動物搬入費1,300万円、備品消耗品費270万円、合計2億1,100万円ほどかかるので、経営的には本当に厳しい状況が続いています。

とはいえ、僕たちにとって、今いる動物たちの命に責任を持つ、動物の保全活動を行うことは、業務であり責務です。業務である以上、「お金がありません」「だからやめます」ってわけにいきません。

いくら暑いからって、パンツまでは脱ぐわけにいかないじゃないですか(笑)。僕たちも、どれだけつらくても脱げないパンツってものがあるんです。

動物園が野生動物の保全活動を行うわけ

――そもそも、なぜ動物園が、野生動物の保全活動を行っているのですか?

当園が動物園として培ってきたさまざまな機能を、野生の動物の保全に生かすことが可能ですし、ぜひ生かしたいと考えているからです。

たとえば、当園では「ニホンライチョウ」の保全活動を行っています。その活動の中で、飼育技術や繁殖技術が向上していき、その技術がいずれは野生のライチョウをも救うことになるんです。動物園の運営そのものが、保全活動につながっているんですね。自然環境と人工環境である動物園が統合された保全をやっていきたいと考えています。

――那須どうぶつ王国では、どんな動物の保全活動を行っているのでしょうか?

那須どうぶつ王国と、姉妹園の神戸どうぶつ王国で、合計4種類の国内固有種の保全活動を行っています。

神戸どうぶつ王国では、絶滅危惧種「アマミトゲネズミ」と希少動物「ミヤコカナヘビ」、那須どうぶつ王国では、国の特別天然記念物で国内希少野生動植物種である「ニホンライチョウ」と日本固有種「ツシマヤマネコ」の保全活動をしています。

――ライチョウやヤマネコほど有名な種とは言いづらい、「アマミトゲネズミ」や「ミヤコカナヘビ」を保全する理由は何なのでしょうか?

生物とは、虫からゾウからクジラから我々人間まで含めて、ひとつの歯車になっているわけですが、そこから一種類でも生物の種がなくなってしまえば、歯車がうまく回らなくなってしまいます。それを食い止めるために、どんな動物であれ、種の絶滅を防がなければならないと考えています。

もちろん、自然の流れで種が絶滅することもありますが、そうした流れにおいては歯車も自然に調整されていきます。でも、短期間に多くの動物がいなくなると歯車そのものが回らなくなってしまう。地球全体に影響を与えてしまうんです。

確かに、「アマミトゲネズミ」や「ミヤコカナヘビ」には、動物園にとっての展示効果はあまりないかもしれません。ですが、目的はそこではなく、絶滅に瀕した種を守ることこそにあるんですね。

特に、「アマミトゲネズミ」は人が放したマングースや野猫の影響で、人為的に数が減少してます。「ミヤコカナヘビ」も同様で、クジャクなどの人間が持ち込んだ動物によって危機に陥っています。

ライチョウのような非常に知名度の高い動物がいる一方で、当園の飼育員ですら誰も知らなかったような「アマミトゲネズミ」という無名な動物もいます。

でも、有名か無名かで生物の価値は決まりません。我々が保全に取り組む対象としては、すべての生物が平等なんです。どんな動物であれ、絶滅してしまったら生物の歯車になんらかの損傷を与えてしまう。それが人間のせいとあればなおさら、保全していかねばならないんです。

こうした、種を守るための保全活動こそが、動物園の責務のひとつであると考えています。

こうした保全活動をこれからも続けるため、当園では2020年11月6日まで、クラウドファンディングで皆さんからのご支援を募っているところです。

5000万達成を目指す!クラウドファンディング


――クラウドファンディングで目指している保全活動と、達成状況を教えてください

いただいたご支援で行うことは以下の5つで、そのすべてが現在達成済みです。

・ニホンライチョウ野生復帰順化施設建設(1,000万円)
・コツメカワウソの家族新展示場整備(500万円)
・マヌルネコの新展示場設置(500万円)
・レッサーパンダの親子展示場設置(500万円)
・希少動物の保全事業&独自のSDGs活動(1,500万)


あと少しで、最終目標である5000万に到達できるところまで来ています。

これまで、たくさん支援をいただきありがとうございました。皆さまからいただいた支援は、前述の活動に大切に使わせていただき、今まで以上に大きな成果を出したいと思っております。

また、支援をご検討いただいている方、当園の保全活動を継続させ、さらに発展させるためにも、ぜひともよろしくお願いいたします。

――ありがとうございました!

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クラウドファンディングの詳細はこちらから

■那須どうぶつ王国 基本情報
所在地:栃木県那須郡那須町大島1042-1
公式サイト:https://www.nasu-oukoku.com/
公式Twitter:https://twitter.com/nakprstaff
公式Facebook:https://www.facebook.com/nasu.oukoku
公式Instagram:https://www.instagram.com/nasu_animal_kingdom/

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