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中央アルプスにライチョウを野生復帰させました!

みなさんこんにちは!

先月9/17に中央アルプスへライチョウを返す、野生復帰事業が行われました。

まず、野生復帰とはなにか?
人によって飼育された個体を生息地に戻して、個体数を増やす取り組みを言います。

日本ではトキやコウノトリですでに行われている取り組みです。

ライチョウにおいては2年前の2022年から中央アルプスへの野生復帰事業が環境省や動物園、大学などの研究機関と協力して行われてきました。

那須どうぶつ王国は2022年からライチョウ野生復帰事業にかかわっており、今年で3年目になります。
1年目は前年度に受け入れた野生(中央アルプス)由来のライチョウを飼育繁殖し、親鳥と雛合わせて計19羽を中央アルプスへ帰しました。

2年目は野生由来の雛が誕生しなかったため、野生由来成鳥を1羽中央アルプスへ帰しました。

そして3年目である今年は、人工育雛で育ったライチョウの雛を中央アルプスへ帰すことになりました。
野生のライチョウは本来母親の盲腸糞をついばむことで腸内細菌叢を獲得しますが、孵化直後から人の手で育てているため、今回は産まれた雛に対し野生個体の糞を凍結乾燥させた粉末を餌にかけて与え、また野生ライチョウの餌である高山植物を与えることによって野生個体と同じような腸内細菌叢を獲得していきました。

ここまで少し難しい話をしましたが、ここからは雛たちが成長していく様子と中央アルプスへ帰すまでの様子をご紹介していきます!

本来、卵を産んだ後母親は抱卵をしますが、人工育雛では孵卵器を用いて抱卵と同じ作用になるよう孵化するまで管理していきました。

孵卵器の様子

1日1回、卵の向きを変える転卵を行います。
自分の手で行うのでとても緊張する作業です。

孵卵器にいれてから約21日後に孵化します。

孵化直後の様子

どの卵からどの子が孵化したかわかるように孵卵器内で区切っています。
孵化1日目は体が濡れているため、体温を下げないよう孵卵器をなるべく開けずに1日様子を見ながら管理します。

休むライチョウの雛

孵卵器よりも広いインキュベーターへ雛を移動させ、体重の増大が安定するまでは1日7回給餌をしていきました。

孵化後約1ヶ月の写真です。体重増大も安定し、すっかりと成鳥のライチョウに見た目も似てきました。食べやすいサイズに刻んでいた小松菜やペレット、高山植物も少しずつ大きくしていき、野生下と同じように植物をそのまま与えていきました。

高山植物ならびに小松菜

中央アルプスへ帰す日が決まったため、野生での生活に適応するために、野生復帰の約1ヶ月前から雛を外展示場で運動させました。

外展示場でおさんぽ

カラスの鳴き声が聞こえると動きを止め身を伏せるなど、危険を察知する能力を見せてくれました。

岩の上を登るのもお手のものです!

2024年9月17日、いよいよ野生復帰の日がやってきました。
那須どうぶつ王国から集合場所の長野県駒ヶ根ファームまで約5時間の陸送。個体の状態ならび温度を常に確認しながら行いました。

そして、ロープウェイに乗り木曽駒ヶ岳頂上山荘へ慎重にライチョウを運んでいきました。

輸送箱にてライチョウを運ぶ様子

頂上付近にあるケージへライチョウを無事移動させ、元気採食を確認しました。

ここで、1週間、高山環境に慣らしたのちに放鳥になります。

雛を孵化させ、若鳥まで成長させ、中央アルプスへ帰せたことにとても安心していますが、ここから冬を乗り越え、繁殖に参加することができるかどうかが1番重要なポイントになります。

私たち担当者は、無事生き残り、次の世代へ繋いでいくことを心より祈っています。

最後までお読みいただきありがとうございました!
那須どうぶつ王国に来た際はぜひ中央アルプスのライチョウに思いを馳せながら、楽しんでいただけたら嬉しく思います。

最後に、孵化後9日の雛を添えて。