保全の森の楽しみ方『前編』
※今回の記事は2020年6月8日に投稿しましたフィシャルブログより
お届けいたします。ご了承下さい。
こんにちは、飼育員の大神です。
今回は「保全の森」について紹介していきます。
動物種が多いので、前編・後編の2回に分けてご紹介します。
この施設は、日本固有種の保全をテーマにしています。
保全とはなにか・・・
保全とは、対象となる動物と、その動物が生息している環境、
そして生態系も含めて守る事です。
この保全の森では、絶滅の危機に瀕しているニホンライチョウなど、
保全に関わる様々な動物を展示しています。
動物たちをご覧いただき、動物たちが置かれている状況について
知って頂く施設です。
それでは、この保全の森にいる動物を紹介していきましょう。
〇スバールバルライチョウ
ノルウェーのスバールバル諸島に生息しているライチョウです。
ライチョウの仲間では最も北に生息しています。
まるで大福のような丸くて白いフォルムはとてもかわいいです。
なぜ、日本固有種について知っていただく為の施設「保全の森」に
外国の種類のスバールバルライチョウがいるのか?
それは、次に紹介する二ホンライチョウと大きく関係しています。
二ホンライチョウは、絶滅の危機に頻している国の特別天然記念物です。
そんな、二ホンライチョウを救うための取り組みが
環境省と日本動物園水族館協会によって
「ライチョウ保護増殖事業」として行われています。
スバールバルライチョウを飼育することにより、
生き物の飼育・繁殖技術を身に着け
二ホンライチョウの生息域外保全の取り組みに生かしています。
〇ニホンライチョウ♂
保全の中心といっても過言ではないニホンライチョウ。
特別天然記念物にも指定されていて、
1980年代には3000羽いましたが
2000年代には2000羽弱と数を減らしています。
こちらがニホンライチョウ♀
雌雄で羽の模様が違います。
ちなみにこれが夏羽、冬になると真っ白な姿を見せてくれます。
ライチョウは標高2200メートルから
2400メートル以上の高山帯に生息している動物です。
なぜ減少しているかというと、
①温暖化によって、ライチョウが食べる食べ物が育たなかったり、
巣を作る木の面積が減っていき繁殖にも影響をもたらす
②キツネやテンなどの里山に住む動物たちが
二ホンライチョウの生息地に侵入し捕食する
③登山客の増加によって、山の環境が乱され感染症の菌の侵入
などがあげられます。
ライチョウを動物園で飼育して守る(生息域外保全)だけでなく、
ライチョウの生息地などの環境を改善(生息域内保全)するなど、
様々な保全活動が行われています。
那須どうぶつ王国でも様々な施設と協力して
ライチョウの保全活動を行っており、人工孵化にも取り組んでいます。
二ホンライチョウを見れる施設は、那須どうぶつ王国を含め
日本国内で5か所あります。
ぜひ来国した際は見てみてください。
〇アムールヤマネコ
東南アジアに広く分布するベンガルヤマネコの亜種で、
展示しているのは1頭ですが実は2頭飼育しています。
毎日交代で出しているため、どちらかしか見る事ができませんが
こちらがミカンちゃん、おばあちゃんねこです。
こちらはイチゴくん、おじいちゃんねこです。
一緒に出ていないのでわかりにくいですが
イチゴのほうが体が大きく顔が若干面長です。
夜行性で、どちらも老個体なので日中はほぼ寝ていることが多いですが
夕方は動いてることが多いです。
なぜアムールヤマネコがこの施設にいるのかというと、
ツシマヤマネコに関係があります。
ツシマヤマネコは長崎県の対馬に生息する
とっても希少なヤマネコで、数を減らしている動物です。
ツシマヤマネコは生息地の減少や、人が仕掛けた罠、交通事故、
犬による噛殺、イエネコからの感染症により数を減らしています。
人為的な影響が多く、1960年代は250~300頭でしたが、
1994年から1996年の調査では70~90頭にまで減少しています。
そんなツシマヤマネコの近縁種である
アムールヤマネコを飼育することによって
スバールバルライチョウと二ホンライチョウのように、
この飼育経験がツシマヤマネコに生かすことができます。
またアムールヤマネコを通してツシマヤマネコの現状について
知ってもらうこともできます。
そして、王国内ではツシマヤマネコ米を販売しています。
このお米を買うと、お米の売り上げの一部が
ヤマネコの狩場となる田んぼの環境保全に役立てられるんです。
実は、王国内にあるヤマネコテラスではこのお米を使用しています。
ヤマネコテラスを利用することで保全活動に参加できるので、
お昼はぜひヤマネコテラスでお楽しみ下さい!
「保全の森」には保全に関する啓発の掲示物もあります。
密猟や乱獲、環境汚染によって数を減らしている
動物の事がわかりますので、ぜひ目を通してみてください。
かわいい!すごい!だけでなく
動物たちが置かれている環境にも目を向けて
保全活動を知るきっかけになれば嬉しいです。
違った目線で動物たちを見る・知ると
また新しい発見ができると思います。
ホームページにも那須どうぶつ王国が行っている
環境保全の取り組みについて紹介していますので、
ぜひご覧ください。
次回は後編で、スナネコ、ケア、ミーアキャット、
ニホンリスについて紹介していきます。お楽しみに!
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那須どうぶつ王国総支配人のnoteに
生物多様性をもっとわかり易く!という記事があります。
併せてご覧ください。