獣医ブログ~ケア新施設~
皆さんこんにちは!
獣医師の上田です。
今日は私が飼育担当している動物の魅力と、先日完成した新施設をご紹介しようと思います。
この動物、名前を「ケア」と言います。ニュージーランドに固有のオウムで、鳴き声が現地の先住民(マオリ)の言葉で「キーアー」と聞こえることから、その名を冠しています。和名は「ミヤマオウム」で、ミヤマ(深山:奥深い山)に生息することからつけられました。
一見地味なモスグリーンの羽ですが、翼の中はとてもカラフルで綺麗な色をしています。
世界で最も知能が高い鳥の一種と言われており、簡単なパズル程度なら解くことができます。好奇心も旺盛で、掃除中の飼育員にちょっかいをかけることもしばしば…。
ここで質問回答タイム!以前TwitterとInstagramで募集した質問に対して答えていきます。
・ケアは人で言うと何歳ぐらいの知能なのでしょう?
・ケアはオウムの中でも特に賢いのでしょうか?
人との正確な比較は難しいのですが、おそらく4歳児くらいの知能はあると言われています。確率の概念を理解するなど、ケアのみ持つ能力が数多くあり、オウムの中で最も賢い種類といっても過言ではありません。
・紐を解けることにびっくりしました。なぜこんなことができるのですか?
ケアの生息するニュージーランドには、近代まで天敵となる肉食動物がいませんでした。また、中毒を引き起こす可能性のある植物が少ないことも相まって、色々な場所を探索し採餌範囲を広げるメリットが大きかったのです。このような背景から、ケアのように好奇心が旺盛で、高い知能を活かして様々な餌(野生では200種以上)を入手できる種が誕生したのではないかと言われています。
・嘴の長さが気になっています。ウサギの歯みたいに伸びますか?
ケアの上嘴は、土を掘ったり深い場所を探ったりできるように長くなっています。時間と共に伸びていきますが、木にこすったりすることで自ら適切な長さに調節しています。
・なぜ乾燥ペレットや段ボールを洗うのでしょうか?野生でも水場付近に生息するのでしょうか?
ペレットを柔らかくして食べやすくするため、水分を含ませ消化しやすくするためなど、いくつかの説があります。野生でも水浴びや飲水などで水場を利用する機会が多いです。段ボールを水に浸す理由は分かりませんが、物を破壊することが大好きな鳥なので、段ボールが水に濡れることで壊れやすくなることを知っているのかもしれません。
・肉食ですか?
基本的には草食で、木の実や果実などを食べていますが、野生ではミズナギドリなどの鳥の雛や卵、ポッサムなどの哺乳類の死骸を食べている様子も確認されています。
・何か特別なことはできますか?
人の手に乗る、おはようと呼ぶと鳴き返す、足でバイバイをする、といったことができます。
・どんな香りがしますか?
ナッツをローストしたような香ばしさと、お日様のような優しい香りがします。スーハ―したくなるにおいです。
・好きな点は?
たくさんありますが、一番は遊び好きなところです、何にでもすぐ興味を持ち、こちらが思いもよらなかった遊び方を考案するので、見ていて飽きないです!
さて、長らく非公開施設で飼育していたケアですが、7月14日に新施設がオープンし、再び皆様にお会いできる運びとなりました!新展示場の作成には私達も深く関わっており、今日はそのこだわりポイントをご紹介いたします。
1.多様な環境
高山地帯を始めとした様々な環境に生息するケアの生態を踏まえ、新展示場は草地、小川、岩場といった多様な環境を備えております。こうした豊かな環境は、探索や水浴び、飛翔といったケアの自然な行動を引き出します。
2.木道
現地の木道を再現しており、まるで国立公園に旅行しに来たかのような感覚を味わえます。木道のわきにはちょっとした遊び心も…?
3.営巣場所
野生のケアは、岩の隙間や丸太の空洞といった、自然物によってできた狭い場所を巣として利用します。新展示場においても、巨大な岩の下にわざと隙間を作っており、営巣・産卵・育雛といった繁殖行動に結び付くことが期待できます。
新展示場は熱帯の森とワンニャンリビングの間にあります。コミカルな動きで遊びまわるケアの姿を是非ご覧ください!